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<2018年度>

前年度以降の校長室より

学校法人内田学園 七沢希望の丘初等学校の教育

 

平成30年度七沢希望の丘の学校づくりへ向けて

学校長/小島富司   

 

 七沢希望の丘初等学校は、平成21年(2009年)の春に開校しましたので、現在9年目のまだ若い小学校です。この初等学校の設立にあたり、「小学校設置の趣意書」の中で、当時の理事長(兼)七沢幼稚園長の内田文江は、次のように述べています。 

子どもたちの前にたち

「~前略~昭和55年に厚木市内/東丹沢の豊かな自然の中に、オープンスペースを生かした園舎で保育実践を重ねてきました。そして、三歳から五歳児の縦割りの」クラス編成を行い、年長児が自らテーマ活動を進める道筋の手助けなど、幼児期に必要な豊かな人間形成のための保育活動を実践・蓄積してまいりました。」~中略~「教育は人が人を育てる業です。人間は一人ひとり精神的にも肉体的にも違いがあります。その違いを認めた上で行う幼児期の教育は、将来変化していく社会において、『生き生きと自ら生きる力』を育てることになります。私たちは、幼小連携の教育の場を持つことを願い、志を共にする人々と協力して小学校を設置することを決意しました。」と。
 そして続けて、とても重要なことは、大山・東丹沢の里山の自然環境を生かした教育空間と小高い丘の上に立つ小さな環境世界における自立型の校舎建築であることを設計施工上からも特徴付けている点です。さらには、校舎そのものを小さな里山の敷地に立つ一つの環境的世界として完結できるように捉え、「四つの思想」として位置づけていることです。
 その一つ目として、子どもたちが生活する校舎は、里山の小高い丘の上に立つ小さな環境世界で自立する環境建築であること。それは、地場産の木材を活用した木造校舎として、教室内は大中小の丸太材による木質空間が創られ、子どもたちによる活動単位に応じる居場所を作り出している工夫です。また、里山の自然と共存する建築の在り方として、自然を建築が押さえるのではなく、木々を尊重した結果、小高い丘の地形に逆らうことなく、建物の形態が左右に4回程振れて形づくられていること。さらに加えて、里山の地形を尊重し、丘の頂部に建物を配置した関係で、正門からのアプローチ正面となる半地下に多目的ホールを置き、1階から2階は教育活動の多様性を考慮して、3学年分の西教室と2学年分の東教室、1学年分の2階教室とし、建物中央部に図書コーナー、特別教室、を配置している建物構造となっています。特に、各教室の外部空間は教育活動の場となるよう、深い庇の広いテラス(ウッドデッキ)教室外側に巡らし、正に「森の中に浮かぶ教室」を演出しています。自然環境の中に溶け込んだ教育環境づくりが成された校舎建築であり、本校の教育理念/教育目標の具現化を目指す上では重要な環境条件の一つとなっています。
 さらに加えて、各教室は人工照明に頼らない、自然採光を主とした教育ができるように、明るい場とほの暗い場場など、濃淡のある光の空間を創り出しているということ。つまり、校舎の南面には構造上必要な耐力壁を耐力格子状に組むことで教室内に柔らかい光を取り入れ、自然の変化を感じ取れる空間とした教育環境づくりです。柔らかな自然光を尊重し、自然な明るさや暗さに対して子どもたちの感性が磨かれることを期待し、「光テーブル」や「スライド」、「影絵」などの教材活用も可能な教室環境となっています。ここには、「自然の力で勉強する」という本校の教育理念のベースとなる、思想の一つであると思います。

おみこし作りの一コマから

 そして、二つ目としては、現学園長内田文江の教育観の根幹となる「自然、里山から学ぶ教育」としての位置づけであります。七沢/日向の里山の自然と共生し、自然から学び、芸術性にまで高めるという教育方針に沿い、自然環境を校舎全体で感じ取れる空間を創り出し、本校ならではの教育環境づくりの特色がここにあります。つまり、この豊かな自然環境から学ぶ「テーマ学習」で育む創造性と、子ども同士で学年の枠を超えて共に学び合う共同性とを育むと言う、新しい教育方式による教育の形を目指していることになります。
 また、子どもたちの共同性や連帯性を育む教育環境づくりの特徴は、校舎全体を「みんなの大きな一つの家」となることを目指している点にあります。建物を被う屋根が、西側の低い空間から次第に高くなり、中央部では2階も包み込んで東の吹き抜け教室まで一体化する大きな家を形作ったスケール感があります。そして、オープンスペースな一室空間の各教室は、太い丸太の列柱による基本構造ユニットの連続によりひだの多い空間が生み出されています。本校の理想とする教育を求めて、様々な教育活動が展開され創造性ある教育実践が繰り返されていくためにも、大中小のゆとりある空間が生み出され、多様な展開が可能となっています。
 三つ目としては、子どもたちの好奇心をかき立てる環境づくりが校舎の随所に生かされていることである。それは、子どもたちの教育環境としての天井の高い教室内の空間づくりの中に、大中小の丸太を多用している点にあり、そこから子どもたちの好奇心を刺激するであろう環境づくりとなっています。既に前述しました、各教室の外部空間にある深い庇の広いテラス(通称/ウッドデッキ)は、日々の教育活動の場として絶好の教室ともなり、正に「森の中に浮かぶ教室」を楽しんでおります。
 最後に四つ目としては、木造の新しい構造からの観点として、丸太柱を主軸として外側の柱で下に引っ張る、「天秤梁架構」等による建築構造と言われる木組みから、低学年棟も高学年棟も天井高い大空間の中で学び続けることは、ここにも本校の教育観である「自然、里山から学ぶ教育」に必ずや繋がるものと思います。以上、平成30年度の七沢希望の丘初等学校の学校づくりにあたり、先ずは設置の趣意書にある「本校の教育観」に立ち戻り、これからの学校運営に携わる所存ですので、ご支援ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

 

 

  ~「カイコの不思議」校長講話より~

七沢希望の丘初等学校長/小島富司

 

今、季節は「芒種」で、農園の麦や蕎麦の実やジャガイモの収穫時期を迎え、一方、今週の13日(水)は田植え行事もせまり大忙しである。本校の春から夏に向けて取り組む体験栽培活動の賑やかな一学期の中盤で誠に恐縮ですが、遅ればせながらホームページ上にて一言ごあいさつ申し上げます。

この度春の人事異動にて、ご縁をいただき七沢幼稚園長より七沢希望の丘初等学校の校長職を拝命することになりました「小島富司」です。これまで築き上げてこられた本校の教育理念「生きる喜びを抱き、自ら学びを拓く」を目指しつつ希望の丘の教育の営みに今年度もしっかりと取り組みたいと思います。

さて、月初めの水曜日(6月6日)の朝会は、「校長講話」でした。「カイコの不思議」と題して、10分ほど話しました。あらかじめ子どもたちの前のテーブル上には、既に4、5日前から繭になった今年の春繭が、わら蔟(まぶし)と回転蔟に真新しく並び、併せて桑の葉を食む五齢のカイコを5、6頭ばかり提示しながら始めました。

先ず、「今日のお話のテーマは、カイコの不思議についてです。僕は今、自宅でカイコを飼育していますが、毎年今の季節は春繭ができる、カイコの世話で忙しい季節です。今日はその一部をここに紹介したいと思います。一つ目の不思議はカイコの呼び名です。カイコは漢字では『蚕』と書き、『こ』とも呼び、特に昔の人たちは『御蚕様』(おかいこさま)と呼びました。なぜこのように呼んできたのでしょうか。」と、聞いてみると。すかさず、2年生の女の子が手を挙げて、「とても大事に育てられてきたからです。」と、答えてくれました。

「その通りです。昔の人たちはカイコと一緒に同じ家の中で暮らし、繭になるまでとても大事に育ててきました。人々は皆、いい繭をたくさん作りその繭をお金に換えることで、暮らしを豊かにしょうとしてきたのです。だからこそ、カイコのことをとても大事な生き物として扱い、『おかいこさま』と呼んできたのです。」

 続けて、繭玉一個を手に取り上げながら、二つ目の不思議は、繭一つからどれくらいの長さの糸がとれるか、そして、「生糸」として昔の人たちが暮らしに役立ててきたことについて話しを進めた。~中略~

 さらに、「三つ目の不思議は、このお蚕様は4月22日に『毛子』(けご)として誕生し、毎日毎日桑の葉を食べ続けて、幼虫としてここまで大きくなりました。一齢から五齢まで『脱皮』(だっぴ)を繰り返し七㎝ほどの大きさになりました。間もなくお蚕様の身体が縮んで透き通るようになると、繭づくりが見られます。是非皆さんも観察してみて下さい。 ~後略~」

 

七沢希望の丘初等学校では、これまでそしてこれからも、教育理念/教育目標として「生きる喜びを抱き、自ら学びを拓く」ことのできる子どもに成長して欲しいとの願いを持ち続けてまいります。この「生きる喜び」とは、全ての人(人間)にとっての思考・行動の原点であって、同時に人間が生きていく上での最終目標にも繋がるものと考えます。

 私たち教職員一同、ここ七沢/日向の豊かな自然や歴史・文化に恵まれた生活環境を教育活動に生かし、そのことによって子どもたちが新たな希望を持ち自らの学びを拓いていく教育実践に努めます。子どもたち自らが、日々の暮らしの中で接する自然・生活体験の中から、疑問に不思議に気付きつつ調べてみようという、意欲・態度を身に付けて欲しいのです。

 学びの原点は、日常の生活体験や遊び体験の中にこそ、溢れるように潜んでいます。こどもたち一人ひとりが、そこに対していかに気付き探し求めて、発見できる知恵や逞しさや疑問に感じる不思議感を身に付けて欲しいのです。そのためには、日々の教育の営みの中に多種多様な「動機づけ」がなくてはなりません。

 本校の特色とする「テーマ学習」には、多様で豊富な「動機づけ」の場が溢れています。子どもたち一人ひとりが縦割り集団のグループの中で、時には子どもの個人の興味・関心をもとに日常の生活課題の解決を目指して、自ら考え自ら調べ主体的に実践していく問題解決学習に取り組みます。その結果として、子どもたち自身が手にした達成感や成就感とともに「学びの喜び」を大いに感じ取って欲しいと願うばかりです。